大会長挨拶

 大会長      任 和子

京都大学大学院医学研究科 


     第10回日本シミュレーション医療教育学会学術大会のメインテーマは「シミュレーション医療教育における心理的安全性」としました。心理的安全性とは、考えや感情について人々が気兼ねなく発言できる雰囲気であり、パフォーマンスが上がる効果的なチームにとってとても重要であると言われています。シミュレーション医療教育は失敗から学ぶ場をつくることが特長の一つです。だからこそ、効果的なシミュレーション医療教育のためには心理的安全性が不可欠であると思います。
     特別講演は、看護現場における心理的安全性を研究しておられる緒方泰子先生にご登壇いただき、事例を交えて、「心理的安全性」がどういうものであるかをご講演いただきます。概念を学んだ後は、発問と応答に焦点をあて、座談会形式でどのようにすれば心理的安全性の高い発問になるのかを考えます。この座談会の場そのものが心理的安全性の高い場づくりのシミュレーションになると期待しています。座談会はライブ配信のみですので、どうぞ当日にご参加ください。
     心理的安全性は、予測困難な時代だからこそ脚光を浴びていると言われています。私たちはコロナ禍により予測困難な時代を生きています。そこで、シンポジウムでは、看護基礎教育の立場、学生実習を受け入れた現場の立場、シミュレーション教育マネージャーの立場でのコロナ禍での経験や取り組みを詳細にご紹介いただきます。また、シミュレーション教育者の能力開発について海外の動向をご紹介いただきます。きっと、みなさまのシミュレーション教育のモチベーションが上がるシンポジウムになるでしょう。
     インターナショナルセッションでは、「米国の看護大学における多職種協働シミュレーション教育」について、米国シカゴ近郊のロックフォードにある聖アンソニー看護大学での実践を、Dr. Dawn Mosherと角田みなみ先生よりご講演いただきます。Dr. Mosherはヘルスケアのシミュレーション教育者の資格CHSE(certified healthcare simulation educator)をもっており、DNP(看護学の臨床博士)でもあります。英語での講演に日本語字幕をつけて講演してくださいます。角田先生が日本語で解説してくださいますので、安心してご質問ください。
     一般演題は21演題で、ライブで口演していただき、オンデマンドでは資料をアップロードします。オンデマンドでもじっくり味わいコメントしてください。この他、協賛企業のご協力により共催セミナー1・共催セミナー2、企業展示もあり、充実した大会となりました。 
     当初は京都大学で実施する予定でしたが、第7波が想定されたことから今年の4月にライブ配信とオンデマンドで実施することを決定しました。残念ではありますが、企画委員一同、手探りで創り上げた日々から得難い経験をしました。
    みなさまと一緒に学べますことを楽しみにしております。